この早さはちょっと驚異だね。

RAGEの『A NEW WORLD RISING』。通算27枚目のフルアルバム。
現在のバンドのラインアップは、中心人物のピーヴィー・ワグナー(Vo、B)にジーン・ボーマン(G)、ラッキー・マニアトポウロス(Ds)の3人で、前作『AFTERLIFELINES』というよりは、前々作『RESURRECTION DAY』の4人からギターが一人脱退してそのままの状態が続いている。
つまり、それだけ今のメンバー間の相性/結託力が良好である顕われなのだが、今回の何が驚異かというと、リリースの早さである。
『AFTERLIFELINES』は、去年40周年を迎えたバンドがリリースした、これまでのキャリアを集約させたかのような2枚組のコンセプトアルバムというヴォリュームを展開させた力作で、ここ数作のRAGEのアルバム中では個人的に好感触の内容だったって事で記憶に新しい。
そんなアルバムから僅か1年で、もう新作をリリース。
一応予兆として「FREEDOM」という曲が先行PVとして披露されたのも知っていたが、改めてアルバムとして発表されると「早くね?」と正直思った(笑)。
これが1980年代で人気アーティストとかだったら有り得た話だったろうが、先に述べた様にこのバンドは40年を越える大ヴェテラン。
ここまでのキャリアとなってきたら次回作が4~5年後なんていう風になっても特に普通と思ってしまうんだが、これほどまでに早いサイクルペースは逆に違和感を覚えてしまうところ。
まァ、裏を返せば現在のRAGEはそれだけ創作意欲に溢れているという証拠で、以前も書いた事あったが、ピーヴィーとしちゃ今のジーンというギタリストとのコンビネーションがすこぶる快調なんだろう。
ジーンはヴィクター・スモールスキ時代の楽曲もこなせるほど卓越した技量の持ち主なので、ピーヴィーからしたら今のラインアップは何でもやれる状態かと捉えられる。
で、
そんな中でリリースされた『A NEW WORLD RISING』だが、今回は全体的にコンパクト化を図った様な内容に仕上がっている。
本編の楽曲で5分を越えるのはたった一曲で、それ以外は3分強~4分弱くらい。
以前からもそのくらいの長さの曲は存在していたが、アルバム単位としてこれだけ短く感じる様な曲が居並ぶのは珍しいかと。
まァ長けりゃ良いってワケでもないが、潔いというか淡泊さすら思わせるスピード感は、前作『AFTERLIFELINES』の反動と見るべきなのか。
あのアルバムはコンセプトアルバムという事も相俟って、全体の重厚感がかなりあったから、逆に今回はそこから解放された快活さがアルバム全体に反映されたのかもしれない。
とはいえ曲自体に関しちゃRAGE以外の何ものでもない。
ピーヴィーが作曲して唄えば結果そうなるのは自明の理だが、キャリア故のトレードマークが頑として存在しているのは、ミュージシャンとしてこれ以上ない武器。
しかも、傍に刺激を与えてくれるメンバーが居るからこそ、創作面に於いても意欲的になっている。
今のRAGEはその好例だし、彼らと並ぶほどのキャリアのバンドが退く事を考える時期に差し掛かっているのを横目に「俺達はそんなのとは無縁」言ってる様な活動っぷりだ。
正直なところ、今回のアルバムは最短コースを狙った様な楽曲内容となるため、賛否が分かれる可能性もありそうだが、バンドの順調さが挑戦的ともとれる内容でスピードリリースされる形になったのは、喜ぶべきなのかな。
いずれにしても、オレとしちゃRAGEは今後もトリオ編成でいてほしい。
出来る限り、今のメンバーでね。