今月に入った途端、聴いておきたいバンドのアルバムがケッコーな数出てくるようになった。
とりあえず、その中で特に気になったものを先ずは。

PARADISE LOSTの『ASCENSION』。通算17枚目のアルバム。
先行MVで「SERPENT ON THE CROSS」を視聴して、これまでに増して攻撃的な曲の印象があり、勿論アルバム全般を語っているワケじゃないが「こりゃあ面白そうだな」と。
PARADISE LOSTは、音楽形態としてはゴシックメタルという、暗くもの悲しい旋律を以て、退廃的な世界観を抒情味を含めて描く音楽を演奏している。
ゴシックメタルは本人たちも自負しており、実際このバンドこそがゴシックメタルという音楽形態を具象化させたオリジネイターであり、今も帝王として君臨し続ける存在である。
10数年前は、欧州では特に女性ヴォーカルを前に立てた形でゴシックメタルと称されるバンドがチラホラ出てきた記憶があるんだが、決定的に欠けているものがあるんだよな。
ソレは、ゴシックメタルを標榜するならドゥーム系音楽を通過している必要性があるという事。
大概シンフォニックという言葉を加えたゴシックメタルと呼ばれているバンドはギターの音も洗練されて硬い感じになっているが、ドゥームメタル由来の埃っぽい重みがなかったりする。
加えて絶望的なサウンドでも無い。
PARADISE LOSTのヴォーカルであるニック・ホルムズが以前に「ゴシックメタルに美旋律はない。あるのは退廃と絶望だけだ」みたいな事を語っていた記憶があった気がするが、このジャンルを確立させた本人たちが実際にそういった音楽を表出させているんだから、まァその他のバンドとの差は一聴瞭然ではないかと。
下手するとPARADISE LOSTのみが唯一名乗れる呼称ではないかとも思える(笑)。
事実、このバンドをメロディックであるかと言われれば、そこは首を傾げてしまう。
一般大衆的解釈に基づく楽曲進行ではあるが、耳障りの良い音/旋律ではないんだよね。
だからこそ、暗く沈み込むような悲嘆な雰囲気が強調されているのも事実なワケで。
それだからと言っても、じゃあ色彩が一色しかないなんて言わせない点もこのバンドの懐の深さであって、彼らが蓄積させてきた音楽的素養を様々な暗色で彩る為、曲にバラエティが存在している。
実際、今回のアルバムはその点を如何なく発揮した内容となっていて、ニックの上手いとはお世辞にも言えないが(笑)変幻自在な歌唱を中心に、重く悲しく攻撃的なサウンドを曲ごとに聴かせどころを変えていっている。
今回見事なのはアルバム全体の流れだね。各曲の配分が良く、持続力が落ちそうなところでスピード感を上げてくるバランスが上手い。
特にアルバム終盤の攻撃的な押し方は、ゴシックメタルが単純にスローなことばかり演奏する音楽じゃないという事、結成35年を越える大ヴェテランが未だに衰えていない事を主張している様にも聴こえる。
このバンドって、ドラマー以外は結成時から不変なんだよね。
なので、その時によって聴感の違いを訴えてくるのは実はドラマーの演奏による影響ではないかと。
今回のアルバムではグイード・モンタナリーニという人物がドラムを叩いているんだが、残念ながら彼はこのアルバムリリース前に脱退。
ただ、グイードのドラミングが、このアルバムに影響を与えているのは間違いないかと思うんだよね。
過去に、このバンドにはAT THE GATES、THE HAUNTEDのエイドリアン・アーランドソンやOPETHのワルテリ・ヴァユリュネンといったドラマーが参加してきたが、グイードのドラムは彼ら以上にこのバンドでの演奏に於いては刺激的に感じる。
メンバーがこの点をどう思っているかはさておき、やっぱりバンドっていうのは人間が変わればグルーヴ/アンサンブルに多少の変化が出るのは当然なんだよ。
そこを上手く舵取りを出来る様にしていけるかがバンドメンバーとしての相性なワケで、前任者や前々任者と全く同じものを要求するってのは土台無理な話。
この辺はあんまり語ろうとするとダラダラくだまきそうなんで、今回はもう留めておく。
つまり言いたいのは、今回のPARADISE LOSTの『ASCENSION』は歴代でも最高傑作に入るアルバムだと思うってこと。