今年に入って、gooブログではNEVERMOREの『THIS GODLESS ENDEAVOR』がリリースから20年を迎えたという投稿をしていたが、キリの良い周年という点ではこのアルバムもやはり上げておくべきか。

『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』。4thアルバムで、今年でリリースから25年。
NEVERMOREは、元々SANCTUARYというパワーメタル系バンドに在籍していたウォレル・デイン(Vo)、ジム・シェパード(B)、ジェフ・ルーミス(G)の3人にヴァン・ウィリアムス(Ds)が加わって結成されたバンド。
活動時期として、グランジが世界的流行を席巻した事もあって、SANCTUARYのメンバー内で音楽方向性を巡って対立が生じ、結果的に解散の道を辿った事から始まっている。
「自分達はメタルバンドであるというルーツに忠実であるべき」という意思の下、NEVERMOREは始動する事になるが、このバンドの最大の特徴はメインソングライターがジェフである事(彼はSANCTUARY末期に参加してきた人物なので、当時はバンド作曲に大々的に携われなかった可能性がある)、そしてウォレルの個性剥き出しの歌唱との相性が合致した、という点だろう。
SANCTUARYよりも明らかにヘヴィでテクニカルな演奏を披露しながら、得も言われぬ怪しさを滲ませた雰囲気は、ウォレルとジェフの2人によるコンビネーションの賜物であるのは誰もが頷くところだろう。
伝統的ヘヴィメタル様式に則った曲進行であるにも関わらず、繰り出されるリフ/フレーズの異様さから、そんな風に捉える事が容易でない音楽へと発展させた、正にプログレッシヴなメタルであり、完全にNEVERMOREというこのバンド特有の世界を作り出している。
バンドはツインギター編成を基本としており、もう一人のギタリストは流動的となっていたが、2012年の解散まで、結成時の4人は不動であった。
『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』は、再びその4人編成で作り上げたアルバムであり、以降のNEVERMOREの存在を決定的にした名盤でもある。
以前より、NEVERMOREの楽曲はヘヴィ且つダークでありながら、スラッシュメタル所縁の切れ味鋭いリフも携えている事で、当時シーンから追いやられてしまったスラッシュメタルの残滓を感じ取れる点に於いても、貴重な存在だったとも言えた(純粋なスラッシュメタルとは言えなかったとしても)。
その要素が高次元で編み出された答えの一つが、『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』であったというのは間違いないだろう。このアルバムは実際、リリースされた当時最高傑作と世界的に評価された。
オレがバンドに触れる事になったのもこのアルバムからで、リリースから2年ほど経った時である。
当時のオレは激烈且つ速いリフ/リズムを刻むメタルを嗜好していたため、突き詰めて言ってしまえば、スラッシュ/デス/ブラックメタルなどの要素を持つエクストリームメタルを欲していた。
そんな中で名前は聞いた事はあったが音楽は耳にしていなかったのが、NEVERMORE。
その時あったレコード店でたまたま目にしたのが『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』であり、帯に書かれていたのが「鞭打つようなリフの鋭さで、メタルシーン随一の威力を誇る」という触れ込み。
「こりゃあもうスラッシュメタルだろう」という思い込みになってもおかしくない年代でもあったなァ、と今でも思ってしまう(笑)。
当時の嗜好を強く持っていた身としては、このアルバムを聴いた時は「なんか思っていたのと違うな」という印象だった。
もっとスピードで攻めていく様な音楽だと期待していたからな。
ただ、一方で違う感触が印象として残ったのも事実。
それは、このバンドというより、このアルバムで繰り広げられる絶望的な冷たさと哀愁。
アンディ・スニープがプロデュースしたサウンドプロダクションにより引き締まった鳴りは、正にメタルである硬質感。
バンドサウンドに一体感が増したことで、旋律の焦点が絞れた感覚が強まっている。それによって、バンドが従来持つ暗さ・冷たさが一層際立つ様になっている。
そう、
ウォレルとジェフによるコンビネーションが、ここで一つの完成形を迎えたと言える。
このアルバムより7弦ギターを使う様になった事で、不気味な低音表現がジェフの真骨頂である事を立証させた点も大きい。
アルバム聴いていた当初はピンとこなかったが、今だったら切れ味鋭いという表現は納得できる。
彼らの初来日公演となったTHRASH DOMINATIONを観に行って、『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』の曲を体感した時、巨大な斧を勢いよく振り下ろしたかのような強烈な聴こえ方に驚嘆したのは記憶に新しい。
以降でリリースされた『ENEMIES OF REALITY』、『THIS GODLESS ENDEAVOR』は音数の多さとテクニカリティの応酬により、NEVERMOREの存在を更に世界中のメタルファンに知らしめた傑作であり、オレも正直ライヴではこの2枚のアルバムの曲を演奏してくれる事を楽しみとしていた。
勿論それらも良かったし、演奏の精度は凄まじかった。
が、それ以上に体感として残ったのは、上述したものであった。
『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』は、先述した2枚のアルバムと比べるとシンプルであり、楽曲の勢いも控え気味。
ただ、それあるが故に、ライヴではフレーズが強烈に響き、重々しいサウンドが轟然と迫ってくる。
ライヴで「THE RIVER DRAGON HAS COME」でのイントロの静寂さからヘヴィなリフに切り替わった時の威力は、今でも忘れられない。このアルバムを改めて聴き直すべきだと姿勢を正した瞬間でもあった。
そのリフの威力というのは、フレーズから醸し出される哀愁と重みから滲み出る絶望的な暗さにも共通。
アルバムの最初から重々しさはずっと続いていく中で、個人的に悲しみと絶望を特に感じさせるのが「THE HEART COLLECTOR」。
最初から最後までギターフレーズは冷たさと重さが合わさり、これほど暗さを突きさしてくるものがあるかと思ってしまう名曲。
メタルの中でも絶望音楽と称されるものは数多あるが、オレはある意味NEVERMOREの音楽も絶望音楽に位置するものと思っている。
ぶっちゃけ、もの悲しさで勝負するとなったら、NEVERMOREに勝てるバンドはそうそう居ないと思うぜ。
あと、このアルバムでもう一つ印象的なのが、サイモン&ガーファンクルのカヴァーである「THE SOUND OF SILENCE」。
日本でも有名な曲であるが、イントロでのフレーズ以降、「何処がカヴァーなん?!」と笑いが出てくるほどオリジナル曲になってしまっている。
ある意味では、このアルバムのハイライトでもある一曲。
かくしてこれほどまでに個性が溢れかえっているNEVERMOREだが、7th『THE OBSIDIAN CONSPIRACY』の後に、ジェフとヴァンが脱退した事により、事実上解散となった。
実は、ウォレルは2020年に『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』リリース20周年を記念して、独自にアニヴァーサリーライヴを企画していたが、残念ながら当人は2017年に心臓発作で急逝。
NEVERMOREの世界を決定づけたあの声が失われたとあっては、もうバンド再結成は二度と有り得ないと思っていた。
だが、
ジェフは2026年に、NEVERMORE再始動を宣言。
亡きウォレルに敬意を表すべく、このバンドに相応しいヘヴィなアルバムを作る事を表明している。
2023年に、ジェフはARCH ENEMYを脱退。
理由は家族と過ごす事を優先したいという事だったが、実際はNEVERMORE再始動を画策していたという事だったワケだ。
当時BURRN!でダニエル・アーランドソンがインタビューで漏らしていた言葉が真実だったというのが、今年になって明らかになったのだが、なんとも複雑な思いである。
ウォレルの声が無いNEVERMOREは存在していいものかと思う反面、ジェフとヴァンの2人が再びタッグを組むというのは嬉しい事でもある。
ヴァンも一時期はGHOST SHIP OCTAVIUSで活動していたが、今はもう活動停止している状態の為に、正直勿体ないと思っていた。
それに、ヴァンの力量を如何なく発揮されるのは、やはりNEVERMOREだろう。
彼独自のヘヴィグルーヴでもって繰り出されるパワーとテクニックを合わせた強烈なドラミングは、NEVERMOREの音楽が持つ切れ味の鋭さを具象化させるために不可欠なものと、オレは考えている。
果たして、他のメンバーはどうなるのか?
次を計画しているバンドは、自身を完全形成した『DEAD HEART IN A DEAD WORLD』を基軸としたものを表出させようとしているのか?
どんな現実を突き付けてくるのか、来年が俄かに楽しみになってきた。